偉大なるオーボエ奏者チナカエフ氏。
The Great Oboist KHANIAFI TCHINAKAEV
ドイツやフランスのオーボエ奏者については、私達も知る機会が多いのですが、ロシアのオーボエ奏者についてはあまり知る機会がありません。
すばらしいピアニストや弦楽器奏者を次々と輩出している、とても音楽的な国民ですから管楽器の名手も多くいる筈なのに中々知ることが出来ませんでした。
何となく、ロシアのオーケストラというと音が大きくて荒っぽいという印象があったのですが、レニングラード・フイルハーモニー交響楽団は西欧に近い地域柄か、それらの特徴に加えて洗練された演奏と緻密なアンサンブル、そして美しい音色で知られていました。ソ連邦崩壊後、サント・ペテルブルグ・フイルハーモニー交響楽団と名前は変わっても、その魅力的な音楽は常に我々を引き付けてやみません。
何度もわが国に来日しているので、その圧倒的な音楽に接した方も多いと思います。
そのオーケストラで第一主席オーボエ奏者を務めるカニァフィ・チナカエフ氏は1947年旧レニングラードに生まれ、レニングラード音楽院においてオーボエをK.Nikonchukに作曲をO.Yevlakhovに師事。
1977年プラハの春国際音楽コンクールにおいて第2位入賞。
ロシア芸術勲章も受賞。
ソリストとしてスペイン、ギリシャ、オーストリア、デンマーク等でも演奏。
モーツァルト、シュトラウス、ヒダッシュ、アルビノーニ、ヴィヴァルディ、ハイドン、等の協奏曲をレパートリーに持ち、ヴィヴァルディ、マルチェロ、ベッリーニ、J.S.バッハの協奏曲のCDも発売されている。現在、サント・ペテルブルグ音楽院とサント・ペテルブルグ・アカデミーでも後進の指導にあたるなど、演奏と指導の両面でロシアのオーボエ界の指導的な役割を果たしている。
アメリカで行われるオーボエの教則本で有名なフェルナンド・ジレ(ギレ)氏を記念した「フェルナンド・ジレ国際オーボエコンクール」のロシア代表の審査員も務めている。
チナカエフ氏使用のオーボエはフランスのリグーター。チナカエフ氏はマリゴやロレーも素晴らしい楽器だが、我々のオーケストラは、最弱音から最強音まで要求される。最強音は他の国のオーケストラよりもう一段強い音が要求されるので、それに答えてくれる楽器としてリグーターを選んだのだという。
私にはそんなに息を吹き込むパワーも無いので一段違う未知の世界なのかも知れない。
そして、リードは何と68mm。それも47mmのチューブで。チューブは先端の太いグロタンのモーリス・ブルグモデル。68mmのリードも使う人はいるにはいるがその場合チューブも45mmなど短くなるのが普通。
ピッチの低い楽器ならともかくフランスでは全長73mm位のリードを使う人が多いリグーターでの事なので驚いてしまう。
深いアンブシャーではものすごく高いピッチになってしまう筈。
リードは私には少し強め。きついという感想にそんなに深くくわえては駄目だという。
チナカエフ氏はその薄い唇で非常に浅いアンブシャーで演奏を始めた。
浅くくわえればもちろん楽にはなるが、やはり私の唇の厚さもあってチナカエフ氏の様に浅くはくわえられない。もちろんチナカエフ氏も47mmのチューブに全長68mmという長さは特殊なので真似をする必要は無いという事でした。
しかし、チナカエフ氏のオーボエから出る音は強く柔らかくそして音楽が溢れていた。

BFK 99011 CD
BFK records,
St.Petersburg,RUSSIA
アントン・ライヒャ作曲:オーボエ五重奏曲ヘ長調 Op.107。
これはこの曲の世界初録音で全曲25分以上もかかるオーボエの室内楽曲としては異例の大曲。
チナカエフ氏の美しい音と音楽性に溢れたオーボエの魅力いっぱいの録音です。
このCDには他にグリンカ、プロコフィエフといったロシアの弦楽四重奏曲が収められています。(原田)